ダイバーシティ&インクルージョンに対応し、変化する「皆さん」という表現
言葉は生き物です。人が言葉を使うことで自然と変化することもあれば、社会の変化に合わせて、意識的に単語や表現を変えることもあります。
少し前によく話題になった「ら抜き言葉」や口語で使われる略した表現などは自然発生的に生まれたものの例でしょう。同時に、例えば「キエフ」を「キーウ」と表現するようにしたりするのは、意識的な表現の変化。これらはどちらも日本語だけではなく、英語でもよく起こります。
最近よく英語で話題になるのが、「皆さん」という時の表現。Ladies and gentlemenが通例の英訳となっていて、ちょっとした規模の会議で挨拶をする時などにはよく使われます。
日本語では「紳士・淑女」ですから、あまり日常生活では使わないですね。一部の遊園地では、英語アナウンスで使われているかもしれませんね。時には、Ladies and gentlemen, boys and girlsというアナウンスを耳にしたこともあります。ちなみに、部屋を見回して、例えば男性が1人もいなかった場合には、LadiesだけでOK。男性が1人だけの場合は、gentlemenと複数形にします。そこであえて単数形にはしません。
しかし、この表現を次第に避けるようになっています。セクシャルマイノリティーやジェンダーマイノリティーと呼ばれる人々への配慮を含め、Ladies and gentlemenのように二者択一の表現を嫌うのです。その代わりに、Good afternoon, everyone.のようにとても一般的な表現を使うことは少なくありません。もしくは、Good afternoon, respected guests.と言った表現もあります。
また、「セクシャルマイノリティー」という表現が上に出てきました。この「マイノリティー」という単語も、使われ方が変わってきています。もともとマイノリティーは「少数派」という意味ですね。絶対数としての少数派でもありますが、実際にはその人たちの声がなかなか社会に反映されなかったり、差別があったり。したがって、客観的にただMinorityなのではなく、社会がある一部の人々をマイノリティーとみなした、もしくはそういった地位を与えた、ということで、マイノリティーと呼ばれる人々は「マイノリティーにさせられた」ということができます。
それを反映したのが、Minoritized。過去分詞形になっているので、受動態ですね。「マイノリティーにさせられた」という現実を反映した表現です。したがって、Racial minority(人種のマイノリティー)ではなく、Racially minoritized populationなどという表現を耳にすることも少なくありません。
筆者:木内 裕也
PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。
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