AI時代のシン・グローバルリーダー入門-5
生成AI時代のグローバル人材育成「サクセッションプラン」(前編)
皆さんこんにちは。グローバル人材育成担当の宇野です。
今日は、グローバル経営人材育成において必須のコンセプト、しかし聞きなれない方も多いかもしれない「サクセッションプラン」について、お話をしたいと思います。
ポストCOVIDとなり、再び海外に目を向けるようになったからか、または円安で急激に経営環境が変わった企業が「グローバル」を改めて見つめなおし始めたからか、わかりませんが、この手のご相談が最近増えています。
昔も今も、多くの日本企業のグローバル経営人材育成には、いくつかの基本的な課題があります。
一つは、グローバル人材のニーズに応える慢性的な人材不足です。これは、過去数十年でほぼ変わっていないと思います。日本企業の海外進出は過去数十年間拡大しており、海外売上高比率も増えてきてはいますが、これに応える人材プールが圧倒的に足りません。これは読者皆さんの会社だけではなく、大手を含むほとんどの日本企業の問題です。
もう一つは、グローバル経営人材育成の方程式がまだ解けていない、ということです。グローバル人材の育成には「時間」と「コスト」がかかります。また、MBAのような学んだらすぐに実務で適用できるハードスキルと異なり、グローバル経営人材育成には、育成のROIが見えにくいソフトスキル、時間がかかる英語力といった複合スキルが必要であるため、「難しい」と思われるようです。
今回、グローバル経営人材について、欧米で過去20年程度定着した考え方である「サクセッションプラン」を紹介することを通じて、体系的に考えてみたいと思います。
グローバル人材育成における「サクセッションプラン」の必要性
サクセッションプランとは?
サクセッションプランとは、企業が次世代のリーダーを育成するための戦略的アプローチです。
このプランでは、会社の将来を見据え、誰が将来的に重要な役割を担うか、そしてそれまでに何を経験させるかを計画的に策定します。
たとえば、皆さんが会社のオーナーだとして、次のCEOは誰にするか、その候補者はどのようなスキルや経験を持っている必要があるか、どのように彼らをその役割に備えさせるか、といったことを考えます。
欧米企業、たとえばサクセッションプランを先駆的に導入したGEでは、自分が経営リーダーとして昇進するためには、あらかじめ現ポジションの後継者を育成・確保することが条件になっている事例もあります。リレーにたとえれば、バトンを落とさず渡すことであり、スムーズな遷移を保証するための重要なプロセスです。
グローバル企業にとって、サクセッションプランの必要性は自明です。世界中の異なる地域や市場で同じレベルのリーダーシップとビジョンを維持するには、計画的なアプローチが必要です。
また、グローバル企業のトップであっても、全世界津々浦々の変わりゆく市場環境をリアルタイムに把握することはできないでしょう。そして外国人人材(そして日本人人材も)、ある日急に辞める、ということは日常です。サクセッションプランがなければ、突然のリーダーシップの空白や、市場の動向に対する適応の遅れが発生するリスクが高まります。
そのような意味でも、グローバルで戦う企業はとくに、リーダーシップの継承プランが不可欠なのです。
日本と海外のサクセッションプランの取り組み方の違い
日本の企業でのサクセッションプランは、しばしば個人に重点を置いたアプローチで進められるように見受けられます。つまり、「あの人にしかできない」という考え方が支配的です。とくに非上場企業ではその傾向があるでしょう。
しかし、海外の多くの企業では、ポジションを中心に計画を進める傾向にあります。これは、個人がジョブホッピングで退職しやすいこともありますが、個人のスキルやリーダーシップの資質を超えて、会社全体の重要戦略として考えているから、とも言えます。
サクセッションプランの手順
サクセッションプランのプロセスは、まずキーポジションの特定から始まります。次に、そのポジションに適した候補者を選定し、育成計画を策定します。最終的には、定期的な評価とフィードバックを通じて、計画の進捗を確認し、具体的選定に入ります。以下簡単に手順を見てみましょう。
グローバルキーポジションの整理
キーポジションの定義と特定方法
キーポジションの定義と特定は、組織運営において不可欠な役割を持つポジションを明確にする作業です。
この作業は現状の整理だけでなく、自組織の中期計画、さらには市場動向を含めた未来から逆算して行うことが重要です。これらを改めて整理する作業をすると、企業の目標達成に対し、どのような仕事とポジションが重要か、どのようなポジションが足りないか、重要なパズルのピース、足りないパズルのピースが明確になります。
たとえば、世界のAI/DX化が進む中で、自社においてそれらを戦略的に活用推進するポジションが「足りない」ということが分かるかもしれません。
ちなみに上記作業は、すでに自組織に職務記述書があれば楽です。なければ、まずその作成から始める、あるいは膨大な手間なので、簡単な内容だけでも記述することが必要になります。レシピなしで料理を作るより、レシピがあれば、社内での情報共有が進み、その後のプロセスがうまく進むでしょう。
ジョブポストでキーポジションを考える
「あの人」ではなく、「そのポジション」で考えるべきです。つまり、個人の能力や人気ではなく、その役割が企業にとってどれだけ重要かを基準にします。これは、映画のキャスティングを考えるとき、特定の俳優ではなく、脚本の要件にもっとも適した俳優を選ぶことに似ています。このようにして、ポジションごとに最適な候補者を選出することが、効果的なサクセッションプランニングにつながります。
後編では、重要な候補者の選抜方法から評価など、サクセッションプランに不可欠な部分についてお話していきます。
Aoba-BBTのグローバル人材開発部では、このような分野をカバーする法人研修も提供しています。ぜひご興味がある方は、お声がけください。
筆者:宇野令一郎
BBT グローバル人材育成事業本部長
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