Talent Identification能力の大切さ
ステレオタイプではありますが、欧米の企業と日本の企業の大きな違いの1つとして、Human Resources(人事)を管轄する部署の役割がよく挙げられます。日本の企業の多くでは、人事部門が採用に関する業務を担い、求人情報を出したり、書類審査をしたり、また面接をしたりすることが多いです。職を求める立場の人々は、最終選考の段階や、場合によっては実際に採用された後にならないと、自分の上司と顔を合わせることがありません。
しかし、欧米の企業の多くでは、上司となる人が実際に採用に大きくかかわることが多いです。求人情報をまとめる作業を行ったり(それをオンラインに出したりするのは人事が行いますが)、書類選考や面接に深く関わっています。そのため、「この人はこの会社で成功できる人かどうか」よりも、「この人は自分の部署で活躍できる人かどうか」が大きな判断基準の1つになります。
採用を人事部門に丸投げしないということは、上司として「部下を育てる」能力を持つだけでは不十分ということになります。もちろん、部下を育てることも大切ですが、「才能ある人を発掘する」ことも大切。Talent Identificationと呼ばれる領域です。日本語で「タレント」というと芸能人を思い浮かべるかもしれないですが、「才能ある人」という意味です。Identificationは「数ある中から見つける」という意味。「この人は伸びる」「この人は磨けば光る」といった部分を見出す能力がTalent Identificationです。
また、面接を受ける側の人も、具体的な上司をイメージすることができます。Job fairと呼ばれるイベントでも、自分の上司となる人に会うことができます。Job fairとは、いろいろな企業が1か所に集まって、求人情報を提供する場です。展示会と似ていて、その場で簡単な面接があったり、いろいろな質問をすることができます。そのようなイベントに出向いた上司は、才能のある人に自分の会社や部署を選んでもらえるように、努力をします。自分が上司だから、といって偉そうな態度をとっていたら、才能のある部下は来てくれないでしょう。
人材のマーケットとして考えてみれば、人事部は仲介の役割をします。しかし、欧米型の求人、雇用体系では、「売り手」と「買い手」が直接顔を合わせることになります。それだけ効率のよい人事業務ができるのと同時に、求人側も求職側もお互いの価値を測りあいます。そこは駆け引きも生まれます。
与えられた人材を育てるだけではなく、可能性ある人材を見つける、発掘する能力も、グローバルビジネスには非常に重要です。
筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。
今なら一流の経営コンサルタント・経営者・起業家・MBA教授による
動画教材7000時間分(AirSearch+大前研一ライブ、月額18,700円分)が無料
ビジネス・ブレークスルー大学 学長
大前研一
ナイキ 創業者
フィル・ナイト
ビジネスジャーナリスト
ダニエル・ピンク
日本通訳サービス代表
関谷英里子
内田和成
慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員
高橋俊介
一橋ビジネススクール 教授
楠木建
BBT大学大学院 客員教授
照屋華子
最新情報やお得なキャンペーンをお届けします