ありきたりの表現を避ける
前回のコラムで、クラウドやAIを使ったサービスのリスクとして、ありきたりな表現を多用してしまう可能性を指摘しました。
これらの表現はClichéと呼ばれます。Tired expressionと呼ばれることも。Tiredとは、「疲れた」の意味ですが、「繰り返し何度も使われた=疲れた」という風にイメージをすると、表現が「疲れた」とはどういう意味か想像ができると思います。
では、実際にどのような表現が避けるべきClichéなのでしょうか? 例えば20年前の中学校の教科書で学んだ表現は、Clichéである可能性があります。日本語でも同じでしょう。20年前、30年前によく使われた慣用表現を使うと、時代遅れの印象を受けるのではないでしょうか。
古臭い表現の例としてよく挙げられるのが、as XX as YYの表現です。As soon as possible「できるだけ早く」の様な例ではなく、As happy as a clamなどの表現です。Very happyの意味をあらわす表現ですが、まず耳にすることはありません。耳にすると、「ずいぶんと古臭い表現を使うな」という印象です。Very oldを意味する表現では、As old as hillsというものもありますが、As happy as a clamよりも聞かない表現。
他にも、Clichéと呼ばれる表現はあります。In the nick of timeはよく耳にします。「ギリギリのところで」「間一髪で」の意味。He woke up on the other side of bed.は「機嫌が悪い」の意味。
このような慣用表現は「英語の知識を持ち合わせている」という意味で、テスト対策には有効。
しかし、あまりに当たり前の表現で、魅力的な英語を使うという観点から、多くのネイティブスピーカーが使わないようにしています。例えばアメリカの大学でComposition(英作文)の授業を履修して、このようなClichéを使った場合、きっと赤ペンでClichéと指摘されるでしょう。
Clichéを使うのであれば、普通の表現を使った方がよいです。As happy as a clamではなく、Very happyで十分。As flat as a pancakeという表現もあります。「ぺたんこ」「平ら」の意味。パンケーキは凸凹がないですよね。これもVery flatと言えばよいのです。
もしもちょっとユーモアを入れて、As flat as how my joke fallsなどと言えれば大したもの。冗談を言ったのに、誰にも笑ってもらえなかったときに、My joke fell flat.と言います。しかしこの様に表現で「遊ぶ」のは超上級の技。
ビジネスの場でよく使われるClichéもあります。シナジーは日本語でも使われますが、「まだSynergyなの?」という印象も。Work togetherなどの表現なら、古臭さを感じさせません。Think outside the boxも同じ。Think differentlyやThink creativelyなどでいいでしょう。LeverageもUseやCapitalize onが良いでしょう。10年、20年前のビジネス書で流行った表現には、ややリスクがあります。
ビジネス書などにも流行りがありますよね。例えばシックス・シグマ。日本で話題になったのは1990年代、2000年代でしょうか。このようなコンセプトが悪いわけではないですし、十分に今でも活用される分野もあります。しかし、いかにも得意ぶって口にしているような雰囲気を出してしまうと、誤解されてしまうことも。
英語のテストではないので、無理に暗記した慣用表現を買う必要はありません。普通の形容詞や動詞を使ってコミュニケーションをとるだけで、きちんと意思は伝わるでしょう。
筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。
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