グローバルマインドを磨く:単語の歴史を知り、適切な表現を
Grandfather(祖父)と言う単語は特に難しい単語ではないですが、動詞で使われることもあります。
例えば、ある法律や規制ができたとき「2023年4月以降に施工された建築物にこの規制が適用され、それよりも前に施工された建築物には適用されない」などと言うことがよくありますね。法律などの規制だけではなく、企業間の契約かもしれません。「監査は来年から2年に1度になるけれど、既存の取引先とは継続的に3年に1度でよい」などという状況。このように「免除」「除外」の意味を表すときに、Grandfatherが使われます。
例えば、Starting April 1, 2023, all new partners will have to be audited every two years. But existing partners will be grandfathered in.であれば、「2023年4月1日から新しい取引先は2年に1度の監査を受ける必要があるが、既存の取引先は免除される」などという風に使います。使い方を知ってしまえば、非常に便利な表現ですが、実は避けるべき表現の1つです。
そもそも、Grandfatherがここで使われるのは、アメリカの歴史にある南北戦争に由来します。Grandfather clause「祖父条項」というものがありました。黒人の投票権をはく奪するために、色々な規制をかけたアメリカにおいて、ある時点で投票権を有していた人の子孫以外は、投票権を得るには税金を払ったり、識字テストを受けたりする必要があるという条項です。この条項を使うことにより、税金が払えなかったり、テストに合格しない人でも、祖先が投票権を持っていた場合(つまり白人です)は投票権が与えられ、持っていない場合(つまり黒人)は投票ができないという制度。「あなたはおじいさんが投票権をもっていたから、投票していいですよ」ということで、You have been grandfathered.と表現されるようになりました。
言い換えれば、人種差別に根差した表現。例えばビジネスの席でこのような表現が使われる場合、使っている人に人種差別の意図はないでしょうし、そもそもこの単語の歴史を知っていないかもしれません。しかし、このような単語を使うのはやめよう、という動きが始まっています。前述の通り、Grandfatherを動詞で使うことは非常に便利。We will make an exemption for you because you have some prior involvement with us.などと言うのではなく、1つの単語で表現できるからです。ただExemptionなどだけだと、「何か過去の背景があるから」というニュアンスまでは伝わりません。
最近では、Grandfatherの代わりにLegacyを使うこともできるのでは、と言われています。Legacyは本来であれば名詞ですが、Grandfatherの様に動詞化することもできます。We will legacy you in.などと表現することで、「(既存の背景があるので)免除・除外します」というニュアンスを伝えることができます。
筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。
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