AI時代のシン・グローバルリーダー入門-4
[番外編] グローバルコミュニケーションの「見えない壁」
ハイコンテクストとローコンテクストを知ろう
皆さんは「ハイコンテクスト、ローコンテクスト」というキーワードを聞いたことがありますか?
おそらく本ブログ読者の皆さんは、グローバルビジネスに興味がある、または関わったことがある方が多いので、「聞いたことがある」「知っている」方が3割くらいいらっしゃるかと思います。
今日はまだご存じない方に向けて、この「ハイコン・ローコン」がもたらすコミュニケーションの「見えない壁」、そして時としてドツボにハマるリスクについて、お話しします。ご存じの方も、ご自身の経験に照らしながら、ご一読いただければ幸いです。
ハイコンテクスト・ローコンテクストとは?
「ハイコンテクスト」とは、言葉だけではなく、対話している状況や双方の関係性が大きく影響するコミュニケーションのスタイルです。世界的には、日本はもっとも「ハイコン」な国の一つと言われます。
たとえば、会議での「うーん」という一つのため息が、何を意味するか、みんなが理解しています。英語に訳せば同じYesでも「はい」「(嫌々)はあい」の意味合いが違うことも理解しています。これがまさにハイコンテクスト文化でのコミュニケーションのあり方です。
一方で、「ローコンテクスト」文化では、言葉はストレートで、言われたことがそのままの意味を持ちます。ローコンテクストの国の人たち、たとえばアメリカ人には「Yes」と言ってしまったら、ニュアンスに関わらず、応じてしまったと理解されたと考えたほうがよい、ということです。
またある提案に日本人が、「それについては、ちょっと考えさせてください」と言ったら、最終的にネガティブな答えになる確率が高そうですが、ローコンの国の人が、「Let me think about it」と言ったら、彼らは本当に建設的に「考える」かもしれません。
国や地域別にみるとにみると
ハイコン代表:日本、東アジア、中東
ローコン代表:アメリカ、ドイツ
といった傾向があります。
私が現在出張中のフィリピンは、ハイコン・ローコンが混ざっている感じです。他に関わった国で言うと、インドは、ハイコン・ローコン混ざっていますが、フィリピンとは異なり主張は強いため、インドの方とのビジネスでは(無論どの国の人ともそうですが)より相手のプライドを傷つけないように配慮する必要があります。
カナダとアメリカは、お隣の国ですがカナダ人の皆さんの方がアメリカ人よりややハイコンだと思います。
このような、ハイコンテクスト、ローコンテクストの国ごとの違いを理解すると、新しい国の人とコミュニケーションをする場合の、良い準備になります。
一方で注意も必要です。
文化的レッテル貼りのリスク
私は以前、アオバジャパン・インターナショナルスクールの理事・ムサシインターナショナルスクール理事長に就いていたので、初めて聞く国名を含め、かれこれ30か国程度の先生たちとの仕事上でのコミュニケーションがありました。
そこでは間違いなく、「ハイコン・ローコン」の事前知識が役立ちました。多国籍の人々とコミュニケーションする際、ハイコンテクストとローコンテクストを知りながら文化的違いを体感するのは得難い経験でした。
しかし!!ここで注意が必要です。
文化的ステレオタイプに頼りすぎると、思わぬ落とし穴にハマる可能性があります。たとえば、「アメリカ人はいつもストレート」というレッテルを貼ると、繊細なニュアンスやアプローチをするアメリカ人とのコミュニケーションを見誤ることになります。
変に「ハイコン・ローコン」でレッテル貼りをすることは、リスクもあるのです。
グローバルコミュニケーションの現場では、ハイコン・ローコンを知っておくことも大事ですが、一人ひとり異なる個人を見ることがもっと重要です。
もう少し例を挙げてみましょう。筆者は仕事柄数多くの帰国子女とも対話しますが、同じ日本人同士でも直球を投げてくる傾向は、あります。
ハイコン・ローコンの原理に沿うならば、あるハイコンテクストの国から来た人が、控えめに「はい」と言ったとき、それは「いいえ」の可能性が高いのかもしれません。
しかし、この人が国際的な環境で育った場合、彼または彼女の「はい」は本当に「はい」かもしれません。また国に関わらず生まれながら「ハイコン」な環境で育った人は、ハイコンアプローチをするでしょう。
文化的背景よりも、その人の経験や個性を理解することが大切です。
おまけ:子どものバイリンガルに見る柔軟性
さて私は、インターの他、オンラインインターナショナルスクール「GO School」で子どものバイリンガル育成にも関わっています。
私は英語を話しますが、比較的大人になってから英語を頑張りましたので「バイリンガル」と胸を張って言えるほどではありません。
しかし帰国子女やインターの子どもたち、またオンラインインターの子どもたちは、しばしばまるで言語のスーパーヒーロー・ヒロインのように、状況に応じて「態度」を含むコミュニケーションスタイルを切り替えられるのを見て驚くことがあります。
日本人に対して日本語では、控えめなトーンと非言語的なニュアンスでコミュニケーションができますが、英語に切り替えると、ストレートで突然、直接的で明確なコミュニケーターに変身!これは、言語ごとに異なる文化的コンテクストに適応する能力の表れです。
結論 :グローバルコミュニケーションの現場では、ハイコン・ローコンを理解したうえで、 個性を重視し、柔軟に対応しよう
最終的に、私たちが心に留めておくべきことは、文化的な枠組みは一つの指標に過ぎないということ。グローバルなコミュニケーションの鍵は、相手の文化を理解することに加えて、その人個人を理解し、尊重することにあります。
Aoba-BBTのグローバル人材開発部では、このような分野をカバーする法人研修も提供しています。ぜひご興味がある方は、お声がけください。
筆者:宇野令一郎
BBT グローバル人材育成事業本部長
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