AIで加速する!?パーソナライズドラーニングとは?(前編)
こんにちは。グローバル人材育成事業本部の宇野です。
皆さん、2020年からの文部科学省による新学習指導要領において「個別最適な学び(パーソナライズドラーニング)」が大きくクローズアップされていることはご存じでしょうか。
従来の学びや研修は、標準化された単一の内容を、講義形式で提供することが主流でした。
しかしAIの発展により、加速度的に「パーソナライズドラーニング」は「普通」になっていくでしょう。
今回は、学校教育、人材育成現場、さらには英語教育でもクローズアップされている「パーソナライズドラーニング」について、2回に分けて、お話ししてみたいと思います。
実はこの「パーソナライズドラーニング」というコンセプト、10年以上前から、PEGLの「マネジメントコースAI」で取り入れられているのです。
1. 一方通行の集合教育 VS パーソナライズドラーニング
一方通行の授業形態は、18-19世紀の産業革命後、学校が義務教育化される過程で広く普及しました。工業化社会の進展とともに、このone size fits all的な教育は、世界中で広く普及し、今でも多くの教育現場で実施されています。
この授業形態は以下の2つの特徴があります。
・教師は標準化された単一の内容を、講義形式で提供する
・全ての生徒にとって、1科目当たりの授業時間、学習の進捗スピードは同じである
この方法は、より多くの人に効率的に教育を提供し、標準的に知識をインプットした人材を大量に育成する目的には寄与しました。しかしながら、人の得意・不得意・理解スピードの差異を無視しており、この方法で各個人の得意分野を伸ばしていく学習は困難です。
現在、加速度的に社会のあり方や仕事の内容が多様化・複雑化しています。子どもたちが社会で活躍する未来は、AIなどが発達し、大量の知識を記憶する価値も薄れ、機械的な情報処理能力やルーティン業務を人間が行うことの価値も薄れていきます。
これからは、皆が等しく大量の知識を記憶し、平均的にスキルを修得することではないでしょう。
むしろ、教育現場では一人一人の個性を活かしながら、本人が好奇心を保ち続けられる分野の能力を伸ばすことや、クリエイティビティやソーシャルスキルといったアウトプット力を伸ばすことに注力すべきだと考えます。
とはいえ学校教育においては、不得意分野であったとしても生きていく上で必要不可欠な内容は、最低限生徒に身につけてもらう必要があります。
生徒の得意分野・不得意分野に関わらず、インプットの時間を効率的にし、好きな分野の能力を伸ばすことやアウトプット力をつけるための時間を最大化することを、教育現場で具現化するための手法として、「パーソナライズドラーニング(個別化学習)」「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」という2つの概念を紹介します。
この2つの概念は一般には目新しい単語かもしれません。
文部科学省の「Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性」では、すぐに着手すべき課題としてアダプティブ・ラーニングの推進を指摘しています。また経済産業省が進める「未来の教室とEdTech研究会」では、「学びの自立化・個別最適化」が、「学びのSTEAM化」とともに大きく提言されています。10年ごとに改訂される学習指導要領が本格改訂・施行した2020年以降の現在、メディアなどでこれらを耳にすることがますます増えると思います。
異文化理解をどのように身につけるかですが、英語そのものの強化のみに焦点をあてたスクールではなく、国際人を作ることを意識したスクールを選ぶことで会得できるでしょう。
2.起源と歴史
最近日本で注目されているこれらの概念は、実は非常に古くからある概念から出発しています。まず、根本的支柱となっている半世紀前の研究をいくつか紹介することから始めたいと思います。
完全習得学習(Mastery Learning)
B.S.Bloomらは、完全習得学習(Mastery Learning)を提唱しました。これは、個人の学習ペースにあわせて基礎学習を完全にマスターしてから次に進む、という考え方です。このモデルは当時より主流であった一方通行授業の教育現場に影響を与え、成績の個人差を解決する有効な手段として知られるようになりました。
・一方通行授業の節目ごとにテストを行う
・テストの結果によって、結果の悪い生徒には追加指導を行う。指導モデルは以下の4種類。
1)再学習:同じ課題をもう一度学習
2)補充学習:個々の学習者が目標到達不十分な箇所のみ補充的な学習を行う
3)学習調整:教授・学習活動の展開のスピードを調整する
4)学習分岐:グループ分けし、異なる学習課題を与える
上記の1)2)は、授業中だけでなく授業後の補習や宿題として出すことになります。授業中に行う場合、不必要な生徒はより上級の学習課題を課します。
個別化教授システム(Personalized System of Instruction “PSI”)
PSIは、1960年代にF.S.Kellerによって提唱された完全習得学習の一形態です。学習者のドロップアウトを無くす方法として、以下の2つのユニークな特徴があります。
・教師は講義を一切しない。学習者は独習教材(60年代は紙、90年代はコンピュータ)で、マイペースで学ぶ。
・分からない部分については、教室内のProctorと呼ばれる学習補助員にいつでも質問ができる
・1つの学習モジュールを終えた後、小テストを受ける。合格しなければ次のモジュールに進めない。
3.20世紀の完全習得学習・PSIの欠点
このように、生徒の成績差を無くす、落ちこぼれを無くすための研究は、半世紀以上前からなされてきました。そして小テストの導入や補習など、一部では授業現場でも取り入れられてきました。しかし本格的に導入されてこなかったのはなぜなのでしょうか。
最大の要因は、いずれのモデルであれ、一人一人の生徒への対応が必要であり、教師にとって負担が大きいものだからでしょう。
日本を例にとると、今でこそ少子化により、日本の1クラスあたりの生徒数は減少傾向にあります。しかし1クラス40名程度だった時代に、学校教員がこれらの方法を実施するのはほぼ不可能だったともいえます。
日本ではこれらを補ってきたのが、家庭教師や個別指導塾といった存在です。彼らにより個別学習の効果は実感され、現代に至るまでこの業態は成長してきました。しかしこれらは高価な選択肢であり、誰もが可能なものではありません。
しかしながら、2010年代以降、人の手によらず、テクノロジーによって個別化対応を解決する手法の開発が急速に進んできました。これが、本項の冒頭にあげた、パーソナライズドラーニングです。半世紀以上も前から提唱されてきた、成績差を解決する理想の形が、ようやく人力ではなく低コストで提供できるようになってきたのです。
パーソナライズドラーニングを取り巻く過去について触れてみました。AIも含めた未来について、次週に続きます。
筆者:宇野令一郎
BBT グローバル人材育成事業本部長
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